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ドバイで唯一の日本人美容室「Salon Nadeshiko」 アラブ人の口コミで広がる人気の秘訣とは

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 ドバイの人口は2018年8月現在、約310万人。人口の80%以上はUAE国籍以外の外国人で世界有数の国際都市だ。日本人の居住者は約3000人と、35000人以上の日本人居住者がいるシンガポールなどの他のアジア諸国と比べても少ない。そうした中、2013年に開業し、間もなく6年目を迎える日本人美容室「Salon Nadeshiko」は、客の70%が日本人以外の外国人。海外の会社からも撮影やショーでのスタイリングのオファーを受けるなど、UAE国内外で人気を保ち続ける同店の魅力について取材した。

世界を舞台にしたい 愛媛からドバイへ。

 同店の共同経営者兼クリエーティブ・ディレクターの薬師神友美さんは愛媛県出身。愛媛市内の美容学校を卒業し、愛媛と大阪の理美容室で経験を積み、「自分の力を世界で試したい」と志し、2010年に単身ドバイへ。ドバイ初の日本人美容室と、高級5つ星ホテルに入る美容サロンでスタイリストとして活躍する中で、薬師神さんを信頼して指名する外国人の客が増えた。客の後押しもあり、「もっと自分が望むようなサービスを提供できる場所をつくりたい」と独立を決めた。

 ドバイ初となる男女兼用美容室「Salon Nadeshiko」は2013年、金融フリーゾーン(保税地区)「Dubai International Financial Centre(通称DIFC)」に開業した。薬師神さんの一番のこだわりは、フルフラットになるシャンプー台。日本でも一部の高級美容室で導入されているが、ベッドのように足先まで伸ばせることで、シャンプーのときにリラックスをしてもらえる空間をつくった。カットやカラーなどのスタイリングはもちろん、シャンプーから癒やしと満足感を得られるようにしたいという薬師神さんの思いを込める。

「今日はどんな髪型にしましょうか」「I don't know

 海外の客の多くはスタイリストに提案を求めてくる。「今日はどんな髪型にしましょうか?」と訪ねても、日本の美容室のように「こんな髪型にしてください」と客からリクエストがあるのではなく、スタイリストと相談しながら決めていきたいという要望が強い。薬師神さんは客の職業を聞き、ビジネスシーンやオフのときまでイメージをしながら提案する。職業は、銀行マンや中東のテレビで活躍する芸能人、専業主婦など多種多様。デザイナーも多いので、常にトレンドも把握することも抜かりない。薬師神さんは提案をして相談して髪型を決めていくことで、客が「楽しい」と思えることが重要だと語る。ビジネスシーンだけでなく、アレンジすればオフの日も楽しめるスタイルや、客の予想を超えるイメージチェンジできるスタイルなどを提案する。

エチオピア人のストレートパーマに5時間!?世界の人々が集まるゆえの課題とは?

 ドバイには世界中から人が集まる。多くの人が世界中でビジネスや生活をしているため、国籍だけで区別することはできない。両親や祖父母なども国際結婚をしている人も多く、国籍とは別の国で生まれ育っている場合もある。そのため、客によって髪質は異なり、カラーやパーマをするにも地毛の髪質やトーンを見極め無くてはならない。

 薬師神さんは「髪の中の構造を想像しながら施術を行う必要があり、スタイリストの基礎力も試される」と話す。同じ黒髪でも、カラーの入りやすさも異なり、パーマなどの施術も薬剤などを工夫する必要がある。常連客の中には、アジア人の髪質とは全く異なるクセの強い人もいて、カラーやパーマなどが長時間に及ぶこともあるという。施術用の美容製品も日本製のもの、海外製のものをどちらも使い、客に最適な施術を心掛ける。

 広告宣伝などを一切行わず、口コミだけで客を集める「Salon Nadeshiko」。シャンプーで癒やされ、スタイリングで楽しくなれる。そんなNadeshikoでの経験が、また通いたくなる、家族や友人にも勧めたくなる、人気の秘訣(ひけつ)なのかもしれない。

薬師神 友美

Salon NADESHIKO Managing Partner & Creative Director

愛媛県出身。愛媛美容理容学校卒業後、愛媛・大阪の理美容室 やブライダルメークを経て、2010年にドバイへ渡航。ドバイ初の日本人サロンでシニアスタイ リストとして活躍後、ドバイの5スターホテル内のサロンで経験を積み、2013年にドバイ初のユニセックスサロン「ナデシコ」をオープン。サロンワークのほか、ドバイのファッション誌、ファッションショー、映画やCMなどのヘアメークとしても活躍している。