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聖なる月にドバイの夜を彩るラマダンテント

ライトアップされたブルジュ・ハリファとラマダンテント

ライトアップされたブルジュ・ハリファとラマダンテント

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 イスラム教の神聖な月ラマダンが6月18日に始まり、ラマダン中にのみ現れ、断食後の食事「イフタール」を提供するライトアップされたラマダンテントは、ラマダン中の風物詩になっている。

イフタールでは伝統的なアラブ料理を楽しむことができる

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 ラマダンとはヒジュラ暦9番目の月を指し、イスラム教の預言者ムハンマドに啓示が下りた神聖な月とされている。イスラム教はヒジュラ暦(太陰暦)に従っており、太陽暦より11日短い。従って、ラマダンも毎年11日ずつ前倒しになる。

 ラマダン中、イスラム教徒は毎日、最初のアザーン(礼拝の呼びかけ)から日没まで、イスラム教五行の一つ「断食」を行う。日中の断食が終わった後、最初に取る食事がイフタール(断食を破るの意)だ。

 日没の礼拝を終えたイスラム教徒がイフタールを行うため、街中のモスクの敷地内にテントが立てられる。一方で、広く一般的にイフタールを楽しんでもらおうと、ドバイ内のアラブレストランなどでもイフタールは提供され、仮設のラマダンテントがドバイの夜を彩る。

 ダウンタウンに建てられたラマダンテントもその一つ。眼前にそびえ立つ世界一高いブルジュ・ハリファを至近距離で眺められるラマダンテントが特徴で、発色のいい紫のダウンタウンのマークが白いテントに映える。

 イフタール直前の午後7時ごろは、40度の気温に加え湿度が高まる時間帯。蒸し暑さを感じる屋外の階段を下りドアを開けると、空調の効いたアラブの宴席が客を迎え入れる。

 受付の横には、礼拝を行う人の写真や礼拝用のマットの絵が掛けられ、モダンな雰囲気を演出。中央にはステージが設けてあり、演奏家の女性がリュートの調べに乗せてアラブ音楽を歌う。心地よいメロディーが、テント内の雰囲気をアラブの宮廷に仕立てていく。

 場内にはテーブル席とソファ席があり、カトラリーとともにナツメヤシの実「デーツ」が置かれている。預言者ムハンマドの時代より、断食の後にはデーツを食べるのが慣例になっており、断食後の空腹の胃を急激に刺激しないように、デーツと常温の水から食事を始めるのが一般的だ。

 7時13分に日の入りを知らせる大砲の音が鳴り響き、一斉にビュッフェに人が並び始める。ダウンタウンのラマダンテントでは、同じダウンタウンにあるPalace HotelやAddress Hotelといった5つ星ホテルから食事がケータリングされている。

 ヒヨコマメをペーストしたホモスや、牛肉のケバブなど一般的な中東料理に交じってひときわ目を引くのが、羊の胴体の丸焼き。大きな肋骨(ろっこつ)があらわになっている姿は、野性味あふれる砂漠の民ベドウィンの食事を連想させる。骨周りについた肉をナイフでそぎ落とし、粘着性の低い長粒種の米と一緒に食べる。

 ビュッフェの隣には、豊富な種類をそろえるデザートコーナーを用意。バクラワ(パイ菓子)やケナーファ(チーズとはちみつのケーキ)といった伝統的なアラブのスイーツに加え、スイスの老舗アイスクリーム店モーベンピックのアイスやジェラート、串刺しのイチゴを片手に持った子どもたちが取り囲むチョコレート・ファウンテンなど、20種類以上のスイーツが並ぶ。

 イフタールは通常21時まで。断食後の食事としてのイフタールの他、夜明け前の食事としてスフールがあり、22時以降に始まることが多い。テントによって異なるが、スフールは、日をまたぎ翌3時や、アザーン直前まで行われるものもある。

 イフタールの始まりからスフールの終わりまで、ラマダンテントから漏れる光がドバイの夜を優しく照らす。

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