アブダビのサディヤット島にある「マナラット・アル・サディヤット(Manarat Al Saadiyat)」で3月15日、和太鼓グループ「カルシャ(Kharsha)」の初めてのコンサート「Farewell(=送別の意。)」が行われた。新メンバーを含む8人が力強い演奏を行った。
会場となったマナラット・アル・サディヤットは、ルーヴル・アブダビやニューヨーク大学アブダビなどが位置するサディヤット島のデザイン地区にあり、昨年11月に文化の発信拠点としてリニューアルオープンした。アート展や写真コンテスト、オペラやジャズのコンサート、満月の夜に行われる天体観測イベントなどが開催される。ヨガや結婚式場として使用できる中庭や、本格イタリアンレストランなども構えられており、様々な年代の人に楽しめるような場所を提供する。
今回演奏を行ったカルシャは2017年から活動を始めた和太鼓グループで、メンバーのほとんどはアブダビにある大学に通う学生。グループ名のカルシャ(Kharsha)はアラビア語で感激(excitement)を意味する。
創設者の松谷鷹太郎さんは、交換留学制度でアブダビの大学に通う。元々ご家族の仕事の関係で11年間アブダビに住んでいた松谷さんだが、エミラティ(=ローカルアラブ人の意)との交流はほとんどなく日本で生活をしていた際に、「今後アブダビに住むのなら、エミラティともさらに交流を深めたい」と心に決めていた。松谷さんが大学で行った演奏をきっかけに、エミラティのタルヤム・アル・カティーリさんが活動に参加し、そこからメンバーを増やし、演奏の機会を増やし現在に至る。これまでには建国記念日を祝いシャルジャ首長国で行われたフラッグデーイベントにも招待され、毎週末のようにアラブ首長国連邦内で広く演奏活動をおこなう。
今回のコンサートでは、新メンバーを含む8人のソロ演奏もあり、カルシャの活動記録を自作の映像とともに紹介するコーナーもあった。途中、演奏の激しさからバチが折れる場面もあり、メンバー全員の全身全霊の演奏に観客は魅了された。最後の演奏が終わると、観客のスタンディングオベーションでの拍手が送られ、大成功の初コンサートとなった。
コンサートのタイトルにあるように、交換留学の期間を終える松谷さんの送別の意味もこめた演奏となった。松谷さんは「いまアブダビを離れるのは非常に辛く、日本に経つ最後の日まで演奏を続ける。活動をしてみて、国籍は関係ないと実感した。心が通じ合えば素晴らしい時間や演奏も共有することができた。大学を無事卒業し、アブダビに戻ってくることも考えている」と話した。